インターネットの普及とともにシステムのオープン化が進み、大きなパラダイムシフトが起きつつあった10数年前、「IT技術によって経営や業務自体が変わる」「ITという新たな武器を手に入れる」と考えていた経営者はまだ少なく、「システムは業務を効率化する道具に過ぎない」という考える人も多い状況でした。
また、ITの有効性を認めていた前者のようなケースでも、いざオープン化を進めてみると考えていたほど活用できない、思ったような効果を上げられない、といった状況も多かったように見受けられます。
もちろん、これは導入を推し進めたコンサル・ベンダー・SI企業側に問題があったとも言えるのですが、ユーザー企業側に、ITを有効活用するカルチャーやリテラシーが不足していたことも一因でしょう。
現在、プロジェクトマネジメント領域を専門にしていてよく聞かれるのが、「マネジメントのフレームワークって実際のプロジェクトに本当に役に立つの?」「重要性は理解しているし、幾つかの手法を実践しているが効果が出ない」といった声でした。これは、PMPホルダーの数に比例してプロジェクト成功率が上がるわけではない、ということと同様の理由だと思います。そして前に述べた、オープン化の際の悩みとも、根は同じだと思います。マネジメント手法の導入においても、元を辿っていくと企業のカルチャーやリテラシーまで問われることになるのです。
プロジェクトが成功しない理由は様々ですが、例えば「いつも無理のあるQCDの制約下でプロジェクトをスタートさせ、途中で火を噴く」であったり、「マネジメント手法に対する現場の意識が低く、統制がとれない」であったり、「そもそもリスク管理や変更管理をする理由や目的が分からない、ずっとそうしてきた」というような問題を抱えたまま、『同じ失敗を繰り返す』ケースが非常に多いのが現実です。なぜ『同じ失敗を繰り返す』のでしょうか。そして、なぜ『変えられない』のでしょうか。失敗を前向きに捉え、やり方を改善し、同じ失敗を繰り返さないための行動を取ることは個人レベルだと簡単そうですが、企業レベルでは実に困難なことのようです。それは問題の原因が現場だけではなく、もっと上位にあったり、企業体質や気質に依存する部分が大きかったりするからでしょう。そのような見えない障壁を乗り越えるコストや期間は、プロジェクト計画時には見積もられていないのです。そのような状況下で表面的にシステムやマネジメント手法を導入しても、『変えられない』という根本的な問題を抱えたままでは、解決も表面的なレベルに留まります。我々が常にぶつかるのは、そうした根本的な問題です。クライアントと共に、それに怯まず、立ち向かい、乗り越えられたときに、本当に変革できた、改善できたと実感できるのでしょう。
