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【日経BizGate連載】GRIT! やり抜く変革マネジメント 第4回 ~失敗を繰り返す組織とどのように向き合うべきか~

2017.10.18

弊社が日経BizGateに連載している【GRIT! やり抜く変革マネジメント】
変革プロジェクトの中には、数値目標は達成したものの、なぜか本質的な部分の変革は達成されていないケースが多く見られます。
本連載ではそのような「変革の失敗」がなぜ起こるのか?について考察したいと思います。
今回の第4回目では、失敗を繰り返さない方法についてお話しします。

*本記事は日経BizGateの許可を得て、全文を掲載しています。

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プロジェクトマネジメントは今や限られた業種・会社で使うものではありません。多くの企業は、一般的なプロジェクトマネジメント標準を自社向けにカスタマイズして、プロジェクトマネジメントの標準的な手順を整備し、その手順に則ったプロジェクトの運営を行っています。

もちろん、変革プロジェクトにおいても変革の実現に向け、さまざまな観点からプロジェクトマネジメントを行うのですが、第1回でも述べたように、変革プロジェクトは難易度が高く、期待した成果を出せない場合が少なくありません。そこで今回は、変革プロジェクトを含めて、社内で実行されるあらゆる種類のプロジェクトが失敗した場合に、失敗を繰り返さない方法について説明します。

あなたの会社では、失敗したプロジェクトへどのように向き合っていますか。プロジェクトマネジメントを実践し、本連載の名前にも含まれている「GRIT(ガッツ・回復力・自発性・執念)」をもってプロジェクトをやり抜いたものの、残念ながら期待した成果を得られず失敗したとしましょう。プロジェクトマネジメントの観点からまず行うべきはプロジェクトの「振り返り」です。振り返りでは、プロジェクトが終了したとき、次のプロジェクトを確実に成功させるための教訓と対策をまとめます。

しかし、振り返りを行ったにもかかわらず、同じ失敗を繰り返す場合もあります。よく聞くのは、特定の部署や特定の会社で失敗が繰り返されるというものです。なぜ、そのようなことが起きるのでしょうか?そして、振り返りでも再発を防げない失敗は、どうすれば防ぐことができるのでしょうか?

同じような失敗を繰り返す組織への対処は、難易度が高いのですが不可能ではありません。本連載の第1回「社長の『想い』、伝わっていますか?」ではジョン・P・コッター氏の著書『企業変革力』(日経BP社)から8つの変革プロセスを紹介しましたが、今回のテーマは8つの変革プロセスのうち、最初の「1.危機意識を高める」ことにもつながりますので参考にしてください。
大規模変革推進のための8段階の変革プロセス

1.危機意識を高める
2.変革推進のための連帯チームを築く
3.ビジョンと戦略を生み出す
4.変革のためのビジョンを周知徹底する
5.従業員の自発を促す
6.短期的成果を実現する
7.成果を活かして、さらなる変革を推進する
8.新しい方法を企業ぶんかに定着させる

出展:『企業変革力』(ジョン・P・コッタ―著、日経BP社、2002年)

「振り返り」は気づきのチャンス、必ず取り組もう!


まず、改めて強調したいのは、振り返りは非常に重要であることです。あなたは振り返りにどのような印象を持っていますか。プロジェクトマネジメントの標準的な手順に定義されているため仕方なく実施している、形式的なイベントと認識している方がいれば、それは考えを改める必要があります。振り返りは、気づきの良いチャンスであり、組織が成長するための良いチャンスです。
プロジェクトが失敗する原因は、プロジェクトチームの行動だけにあるわけではありませんが、必ず教訓と対策は得られます。例えば、大幅なスケジュールの遅延を、会社によるリソース面のサポートやメンバーの必死の努力でリカバーしたプロジェクトがあったとします。振り返りでは、さまざまな問題が浮き彫りになるでしょうが、「もともとの計画に無理があった」という原因が挙がることも珍しくありません。

このとき、「もともとの計画に無理があった」という原因に対する教訓と対策の例を挙げると、以下のようなものになるでしょう。

・計画の実現性が不確かなままプロジェクトを開始した
→計画の実現性を事前に評価する機会を設ける
・プロジェクト計画を入念に検討しようにも時間がなかった
→プロジェクト計画の期間をより長く確保する
・実現性の高いプロジェクト計画を立案できるメンバーがいなかった
→実現性の高いプロジェクト計画を立案できるメンバーをアサインする
・マネジメント層からの要求でスケジュールが短縮された
→スケジュールを短縮する際のコストを見積もり時点にて織り込む

以上のような教訓や教訓に基づく対策が、次のプロジェクトでしっかり生かされれば、プロジェクトの成功は格段に容易になるはずです。

問題は、教訓と対策を整理したにもかかわらず、次のプロジェクトでその対策が検討されなかった、対策を検討したにもかかわらず実際には実行されなかった、対策を実行したにも関わらず改善されなかった、などによって同じ失敗を繰り返した場合です。これはプロジェクトマネジメントの改善では解決できない、より大きな問題が隠れている可能性があります。それは「プロジェクトの失敗を容認する組織」の存在です。

振り返りも効かない失敗プロジェクトの原因とは?


「プロジェクトの失敗を容認する組織」は大きく分けて2つあります。

第1に、振り返りで整理する教訓と対策の内容が慢性的に浅くなっている組織です。振り返りの会議は、形式的なイベントになっています。失敗の原因として挙げられるのは、人員不足、スケジュール不足、コスト不足といった表面的なものです。例えば、失敗の原因が「人員不足」の場合、その対策も「次回は人員を多めに確保する」といった曖昧なものにとどまり、人員増強の具体的な方法、同様に人員が確保できなかった場合の対策までまとめていません。

第2に、振り返りで整理する教訓と対策の内容は十分なのですが、有効な対策を実行することができない組織です。教訓と対策を整理したプロジェクトメンバーは、人員不足やスケジュール不足を生んだ、より根本的な原因を見つけていますが、組織の中で波風をたてないように、それ以上掘り下げません。上司に問題を提起しても取り合ってもらえず諦めている場合もあります。具体的には以下のような気分が組織に蔓延しています。

・実現性抜きにトップダウンでスケジュールが決まるからどうしようもない
・適切な力量を持つプロジェクトマネジャーがそもそも社内に少ない
・十分な予算を申請しても削減され、プロジェクト実行後に追加申請するほうが容易だ

もちろん、こうした状況も想定して目的を達成するのがプロジェクトマネジメントであると言うのは簡単ですが、中長期にわたりこうした状況が続けば、振り返りはいずれ形骸化して意味をなさなくなり、失敗プロジェクトが繰り返されるようになります。

失敗を容認する組織であることに経営層は気づかない


それではどのように「プロジェクトの失敗を容認する組織」を脱したらよいでしょうか?とにかく問題の深刻さを経営層が正しく認識できない状態では、抜本的な対策は実施できません。組織の成長(変革)のチャンスをみすみす捨ててしまっているとも言えますので、トップダウンで権力を行使しても問題の存在を認識しなければなりません。

もちろん、多くの経営層は「問題が大きくなり、我々にエスカレーションされれば、重大さを認識して対策も行えるが、それまでは個々の現場で対策を検討して実行するのが現実的」と考えるのが通常です。そのため、「プロジェクトの失敗を容認する組織」の問題も、現場が経営層にエスカレーションするべきと考えています。
一方、「プロジェクトの失敗を容認する組織」の現場は、自らの組織に原因がある根深い問題を経営層にエスカレーションしても解決しないと感じています。人員不足のような現場で解決できない問題を上司や上層組織にエスカレーションして解決に当たるのは当然のことですが、人員を数倍に増やすといった大きな問題や、そもそもなぜ人員不足が明らかなのにプロジェクトがスタートしたのか、のように問題が本質的になればなるほど、エスカレーションというプロセスは実行されない傾向があります。

以上のように、「プロジェクトの失敗を容認する組織」では、経営層と現場の意識に、深い溝があります。この深い溝を意識して埋めることが必要です。

その方法を考える際に参考になるのが、「シングルループ学習」と「ダブルループ学習」という概念です。アメリカの組織心理学者クリス・アージリスとドナルド・ショーンが著書『組織学習(Organizational Learning)』(Wiley-Blackwell)で提唱しました。

シングルループ学習は「想定した目標をどうすれば達成できるのか?」という確定した目標に対する手法を検討する学習で、ダブルループ学習は「想定した目標自体が間違っているのではないか?」という目標自体を疑う検討も含んだ学習です。組織が成長し競争優位を保ち続けるためには、この2つの学習の両方を継続して実践することが不可欠だというのが『組織学習』の主張です。

「シングルループ学習」と「ダブルループ学習」を、プロジェクトマネジメントに当てはめてみましょう。まず、プロジェクトの目標達成に必要になる教訓と対策を検討する「プロジェクトの振り返り」はシングルループ学習です。それに対して、プロジェクトの目標自体が間違っている可能性も含めた「プロジェクト失敗原因の踏み込んだ検討」がダブルループ学習です。

想定した目標、前提を疑うダブルループ学習が有効


「プロジェクトの失敗を容認する組織」を脱するには、このダブルループ学習を効果的に実践する「場」や「仕組み」が必要です。先ほどのように「実現性抜きにトップダウンでスケジュールが決まるからどうしようもない」という場合ですと、なぜ実現不可能なスケジュールをトップが決めるのかについて、掘り下げて検討し、その対策を実行することが必要です。

ここでいう、「実現不可能なスケジュール」とは、現場の担当者が少し見れば、限りなく不可能に近い、または実現する方法はあってもその方法はコスト的に採用できないものだとしましょう。ダブルループ学習では、そうした実現不可能なスケジュールが社内で受け入れられてしまうことが、そもそも間違っていると考えます。例えば、以下のような原因があり得ます。

・スケジュールの実現性を検証するプロセスを経ないでトップが決断する
・実現性の低いスケジュールを顧客が指示してもトップが拒否できない
・トップの一声で何事も決まる社内風土がある
・スケジュールを守れなくても、頑張れば評価や報酬に影響しない人事制度である

これらはあくまでも一例ですが、ダブルループ学習によって初めて提起された、解決すべき「課題」です。「想定した(与えられた)スケジュールをどうやって達成するか?」という視点では決して提起されません。

そして、ダブルループ学習によって提起された課題に、経営層が目を向けるための「場」を作りましょう。そこでは通常は現場による振り返りの結果について報告を受けるだけの経営層が、あえて振り返りの妥当性にまで踏み込むようにします。

これは決して「犯人探し」や「後ろ向きの議論」の場ではありません(また、そのような場にしてはいけません)。プロジェクトで同じ失敗を繰り返してしまう組織が、より本質的な課題を追及して解決するための「改革(変革)」を検討・実行するきっかけを得る場です。

もちろん、これまで長年放置されてきた課題に取り組みますので、社内のしがらみや部門間の利害関係などもあり、なかなか本質に迫ることが難しい場合は少なくありません。そこで、外部パートナーの力を借りるのも1つの選択肢だと思います。

外部パートナーの力を借りる場合、パートナーの知識や視点を取り入れることができる、社内のしがらみにとらわれないという利点がありますが注意も必要でしょう。第三者であるがゆえに、「見える/言える」部分もあれば、逆に「見えない/言えない」部分もあります。また、高い情報収集・分析力とプレゼンテーション力を持っている第三者が、見栄えの良い報告書に問題をまとめた結果、より本質的な課題が見えなくなる場合があります。

従って、外部パートナーの力を借りる場合も任せ切りではなく、社内のメンバーとうまく協力・補強する体制を組むことが重要です。

本質的な課題に向き合うことの難しさを認識しよう


次に、必要になるのは、上記のような場を適切に運用する「仕組み」です。「プロジェクトの失敗を容認する組織」であることを認識することは予想以上に難しいので、成果を出すことに焦りは禁物です。組織の成長のために不可欠で重要なことであると十分に認識した上で、根気よく持続的に本質的な課題を追及し、対策を立案・実施する組織に変えていく必要があります。

参考までに、このような活動の難しさをうまく言い表した文章がありますので紹介しましょう。『なぜ人と組織は変われないのか』(英治出版)で有名なロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒーの著書『なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか』(英治出版)からの引用です。
 ―――実は、組織に属しているほとんどの人が、本来の仕事とは別の「もう一つの仕事」に精を出している。お金ももらえないのに、その仕事はいたるところで発生している。大企業でも中小企業でも、役所でも学校でも病院でも、営利企業でも非営利団体でも、そして世界中のどの国でも、大半の人が「自分の弱さを隠す」ことに時間とエネルギーを費やしている。まわりの人から見える自分の印象を操作し、なるべく優秀に見せようとする。駆け引きをし、欠点を隠し、不安を隠し、限界を隠す。自分を隠すことにいそしんでいるのだ。

思うに、組織でこれほど無駄を生んでいる要素はほかにない。もっと価値あることにエネルギーを費やすべきではないのか? この無駄が生み出す弊害ははっきりしている。組織とそこで働く人たちが潜在能力を発揮できなくなってしまう、ということだ。その損失はあまりに大きい。―――

本著書では、発達心理学の専門家である著者が、組織と個人両方の潜在能力を開花させることで強い組織をつくる方法を述べています。その具体的方法は、本著書を参照いただきたいと思いますが、組織として弱さを受け入れることの難しさを理解した上で、その解決策の提示に挑んでいる点で非常に参考になります。人と組織が持つ、逃れられない特性として弱さを受け入れ、弱さに向き合う必要があるのです。

同じ失敗を繰り返さないための3つのポイント


最後に、ここまで述べたポイントを3つに整理しましょう。

① 「振り返り」を形だけに終わらせず、必ず次のプロジェクトに生かす
プロジェクトの一環として振り返りを必ず実行し、次のプロジェクトに生かす具体的な教訓と対策を残す必要があります。また、プロジェクトの現場レベルでの解決が不可能な問題については、上層組織にエスカレーションします(エスカレーションする仕組みを作りましょう)。

② 振り返りで対応できない組織的な課題に取り組む
振り返りを行っても失敗を繰り返す場合は、プロジェクトの目標やプロジェクトの失敗を容認している組織自体に課題があるという視点で、振り返りの結果を深掘りする場を持つようにします。社内のしがらみや部門間の利害関係をできるだけ排除し、検討結果を実直に受け入れる経営層の理解が不可欠です。必要に応じて外部パートナーの力を借ります。

③ 会社レベルで組織的な課題を認識して仕組みで解決を図る
明らかになった組織的な課題は、会社レベルで危機感を共有し、優先度をつけて順番に解決します。プロジェクトの現場レベルの課題はプロジェクトチームに改善を任せつつ、組織的な課題については、経営層を交え会社レベルで持続的に対策へ取り組む「仕組み」を作ります。

プロジェクトの成功や失敗は、プロジェクトマネジメントの出来不出来のほか、内外の環境に大きく左右されます。ほとんどの場合はプロジェクトの現場レベルの振り返りをもとに教訓と対策を整理し、その後のプロジェクトで適切に対策を実行することで、継続的な改善が見込めますが、同じような失敗が続くとき、あるいは同じような教訓と対策が繰り返し提起されるときは、プロジェクトの目標やそれを作った組織そのものに課題があると疑いましょう。

失敗に終わるプロジェクトにおいても、プロジェクトメンバーは目標達成のため、数々の困難に立ち向かい、ときにはボロボロになりながら、プロジェクトを完了させます。そのボロボロになるほどの苦労の原因が、自らが所属する組織にあるとしたら、いかがでしょうか。一刻も早く、その原因を発見して解決したいと願うのではないでしょうか。

そうした組織的な課題の片りんが見られるのも、振り返りです。失敗プロジェクトの振り返り結果には、成長のためのヒントがつまっています。重要なので何度も繰り返し指摘しますが、経営層は、失敗を「貴重な」会社の成長(変革)のチャンスと捉え、正面から向き合うようにしたいものです。

出展:日経BizGate 2017年10月18日掲載記事

 

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