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【日経BizGate連載】GRIT! やり抜く変革マネジメント 第5回 ~「組織IQ」を高めてプロジェクトの失敗を防ごう~

2017.11.21

弊社が日経BizGateに連載している【GRIT! やり抜く変革マネジメント】
変革プロジェクトによっては、数値目標は達成したものの、なぜか本質的な部分の変革は達成されていないケースが多く見られます。
本連載ではそのような「変革の失敗」がなぜ起こるのか?について考察したいと思います。
第5回目は、組織IQを高めてプロジェクトを成功に導く方法についてお話しします。

*本記事は日経BizGateの許可を得て、全文を掲載しています。

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前回の記事「失敗を繰り返す組織とどのように向き合うべきか」では、プロジェクトの「振り返り」を確実に行うことが失敗を防ぐ対策として大切であること、併せて「プロジェクト」の視点と「プロジェクトを推進する組織」の視点の2つから課題を洗い出して対応することを提言しました。今回は、「プロジェクトを推進する組織」の視点をさらに突き詰め、「組織IQ」の視点でプロジェクトの失敗を防ぐ対策を解説します。

昨今、組織の特性・能力、特に「組織IQ」と呼ばれるものがそのままプロジェクトの成否に大きく影響していると感じています。組織IQを簡単に言うと「会社や事業部といった組織におけるコミュニケーションと意思決定の能力」です。

大規模プロジェクトでは、「プロジェクトチーム=1つの会社や1つの事業部」になりますから、組織IQの高低がプロジェクトの成否にそのまま影響します。また、小規模プロジェクトで少人数のチームを構成した場合も、その「プロジェクトチームの組織IQ」は、チームメンバーが所属する組織のなんらかの特性・能力を受け継いでいます。

いずれにしても、プロジェクトを成功に導くには、組織IQについて知り、それを高めるようにすることが不可欠です。

メンバーが個人として優秀なだけではうまくいかない!


なぜ組織IQはプロジェクトの成否を左右するのでしょうか?

まず、前述のように、組織IQの本質とは、「組織におけるコミュニケーションと意思決定の能力」です。組織を構成する個人のIQとはあまり関係がありません。

「このプロジェクトでは、社内の優秀な社員を集めたんだけど、意外にうまくいかなかった」「今回のプロジェクトメンバーは全員、プロジェクト経験が豊富なんだけどそれが生かせなかった」――。プロジェクトの振り返りなどで、こうした発言をよく聞きます。これも個人IQ と組織IQは違うことを知っていれば、すぐ理解できます。

「プロジェクトチーム」の組織IQも、プロジェクトメンバー1人ひとりが持つ個人のIQの合計ではありません。1人ひとりが優秀でも(個人のIQが高くても)、「プロジェクトチーム」という組織が、コミュニケーションと意思決定に関する高い能力を持つかどうかは別ものなのです。

逆に優秀なメンバーを集めたプロジェクトチームほど、当たり前のこと、普通のことをないがしろにする傾向にあります。特に、組織IQの要素の1つである「コミュニケーション」は代表的でしょう。組織IQが低いプロジェクトチームでは、プロジェクトにおけるコミュニケーション活動が「形式的なイベント」になる傾向があります。

具体的に、コミュニケーション活動が「形式的なイベント」になっていると感じるのは以下のような場合です。

●メンバーがプロジェクトの目的やゴール、範囲を正しく答えられない
プロジェクトの目的、ゴール、範囲などは、プロジェクト憲章で明確化しているはずですが、そもそもそれらが文書化されていません。また、プロジェクト憲章を文書化していた場合も、プロジェクトメンバーなどの関係者にプロジェクト憲章の内容が展開されておらず、ゴールや目的などが共通認識化されていません。

また、プロジェクトの目的などを変更したあと、メンバーに質問すると古い目的などを答える場合も注意が必要です。これは目的などの変更が非公式な雑談で済まされ、明確化・文書化されていないときに発生します。プロジェクトチームの公式なコミュニケーションパスを使用して変更内容が展開されず共通認識化されていない場合にも起こりえます。

●体制図はあるが、個々のタスクを担うチーム間の連携ができない
プロジェクトの体制図において個々のタスクを担うチーム名が四角の箱で囲まれ、メンバーの名前が入っているだけで、役割と責任が明確化されていない場合によく見られます。結果、各チームは自分たちの役割と責任を勝手に解釈して行動するため、どのチームも対応していないタスクが発生したり、複数のチームが同じタスクを行っていたりします。

●課題をリストにしているが、アクションを実行していない
課題管理のため、課題を定期的に集約してリストにしてありますが、そのリストに記述された個々の課題に対するアクションが実行されないことがあります。実際に、課題リストを関係者が眺めるだけになる会議を毎週繰り返すプロジェクトをいくつか経験しました。

これは課題の文書化は行われているのですが、リストにまとめた課題の内容が主観的・曖昧で、事実をもとに課題が明確化されていないときによく見られます。課題自体が曖昧であれば、誰が、いつまでに、どのように対応すべきなのかについても明確化することは困難です。結果、課題についての会議を重ねても、関係者による共通認識化が進まず、いつまでも対応できない状況でいるのです。

こうしたことが起きる原因は、コミュニケーションを推進するための基本的な活動が実施されていないためです。上記例でも太字で示しましたが、大きく分けて『明確化』『文書化』『共通認識化』という3つのキーワードでプロジェクトの活動を点検してください。

① 明確化
まず、みなさんのプロジェクトにおいて、プロジェクトの実施に必要となる情報は明確化されていますか。ここでいう明確化とは、誰が、いつ、何を、なぜ、どのようにしたといった事実を基にプロジェクトの状況を把握することです。

② 文書化(①で明確にしたことを文書化)
また、明確化した事実に基づくプロジェクトの状況は、プロジェクトメンバーが誰でも参照できるように文書の状態にします。必要であれば図表も加えて、第三者が読んで、誤解がないようにするのがポイントです。

③ 共通認識化(←①②で整理した内容を全員で共有)
明確化・文書化したプロジェクト状況は、プロジェクトチーム内のコミュニケーションパス(連絡経路)を通して展開し、メンバーに共通意識を持ってもらいます。形式的な情報展開(メールや定例会議など)だけでなく、重要事項については顔を突き合わせて認識を深める機会を持つことが必要です。また、何度も繰り返すことが大切です。

プロジェクトメンバーの多くは通常の会社の業務もこなしながらプロジェクトに参加しています。「こんな暇はない」と思われる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、コミュニケーション活動については、プロジェクト内向け、プロジェクト外向けをしっかりと計画すべきです。それらが、そもそも計画されず、リソースも確保されない場合、プロジェクトに手戻りが発生し、スケジュールが遅延することが少なくありません。

やはり「急がば回れ」なのです。

ちなみに、プロジェクト内向けとプロジェクト外向けの2つのコミュニケーション活動をそれぞれ計画するのは、目的がそれぞれ異なるためです。プロジェクト内向けのコミュニケーションは、プロジェクトチームを1つにまとめ上げるためのものです。プロジェクト外向けのコミュニケーションはそのプロジェクトの影響を受ける組織を1つにまとめ上げるものです。

コミュニケーション活動とは、プロジェクトや組織を「1つにまとめあげる」ものだからこそ簡単なことではありません。だからこそ手間暇がかかるものであり、手間暇をかけるべきものです。よって、きちんとプロジェクトのタスクとして計画し、スケジュールとリソースを確保することで、「もともとの計画に沿って無理なく確実に実行していく」ことが必要です。

「当たり前」「普通」のこともあえて伝える組織に


以上で個々のプロジェクトにおける対策は行えますが、そもそもコミュニケーション活動を軽視するような状況は組織IQが低いと言えます。組織IQを意識的に高めるようにしなければ、同じような失敗を繰り返すでしょう。

現在、日本の多くの組織において組織IQが低いのは、「当たり前」「普通」といった暗黙の了解に頼りがちな姿勢が強いためです。

私がそう考えるのは、実際のプロジェクトで「普通は誰もそう思いませんよ」「普通、その仕事はXXチームの仕事じゃないんですか?」「そんなの当たり前に考えればわかるでしょ?」といった言葉をよく聞くためです。この言葉を聞いたプロジェクトでは、たいていトラブルが生じます。

具体的には、メンバーの勝手な「当たり前」「普通」という思い込みによって間違った方法でタスクが行われ、あとでやり直しが発生するようになります。そして、スケジュールが遅れた状況で「当たり前」「普通」と言っていたことの本当の中身について話し合いをするため、プロジェクトがさらに遅れるという状況に陥ります。

しかし、そもそも「当たり前」「普通」とは何でしょうか。一昔前は、「当たり前」「普通」は通じたかもしれませんが、今や私たち1人ひとりが受け取る情報や経験は多様で、国内においても多様性(ダイバーシティー)は既に存在しているのです。ましてや他国で育った人とも協業するプロジェクトでは、「当たり前」「普通」は存在しないと心得るべきです。方法やルールだけでなく、価値観も違います。

大きなプロジェクトであればあるほど、より多様な価値観のメンバーが協業していかなければなりません。そこでは、「当たり前」「普通」という言葉、さらには言葉さえ不要という日本人特有の「あ、うん」の呼吸はプロジェクトにとってリスクそのものでしょう。

これからは、前述した『明確化』『文書化』『共通認識化』という3つのキーワードを軸に、組織IQを意識的に高めたいものです。

脱・単一民族感覚のすすめ


記事本文では、国内のプロジェクトにおいても多様性を前提にしたコミュニケーションは既に不可欠であることを説明しました。実はプロジェクトチームを含め、国内の様々な組織は今、「ハイコンテクスト文化」から「ローコンテクスト文化」へと遷移しています。

これらはアメリカの文化人類学者であるエドワード. T. ホールが唱えた概念で、ハイコンテクスト文化とは、共通の言語・知識・体験・価値観・ロジック・嗜好性が存在するため、言葉として表現しなくても相手に意図が伝わるとされる環境です。それに対してローコンテクスト文化とは、言葉に表現された内容のみが情報としての意味を持ち、言葉にしていない内容は伝わらないとされる環境です。

お気づきのように、ローコンテクスト文化の環境においては、物事を言葉や数値で明確化・文書化して、必要に応じて正しくタイムリーにそれらの情報を展開し、共通認識化することがプロジェクトをうまく進めるポイントになります。まさに本文中で述べたことです。

とりわけ複数の国のメンバーが協業するグローバルプロジェクトは基本的にローコンテクスト文化の環境であり、様々な注意点があります。それら注意点はローコンテクスト文化に遷移しつつある国内の様々な組織やプロジェクトで同様に気をつけるべきでしょう。

以下、私が大規模グローバルプロジェクトで、徹底して気をつけてきた点を共有します。

・事実(Fact)と予想(Guess)を明確にする
・自分の「当たり前」は、他人にとっての未知と思う
・正式なコミュニケーションパスを活用する
・コミュニケーションしたことの証を確保する
・必ず「前提」を用意して、話し合う(都度、相手との間に共通の"価値"を置いて話をする)


ピューリッツァー賞を3度受賞したトーマス・フリードマンの著書『フラット化する世界』(日本経済新聞出版社)をご存知でしょうか。ちょうど10年前、その本を読んで、私は衝撃を受けました。未来、ビジネスや人材、情報は世界規模で流動するという内容であり、ずっと先の話だと認識していましたが、もうその時代は本格化しており、私たちはそのただ中にいることを意識しなければいけないのではないかと思います。

出展:日経BizGate 2017年11月21日掲載記事

 

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